text&photo by kyosuke yamauchi(Minamisanriku)
 




震災は様々な物事を奪ったが、与えることもある。南三陸町歌津馬場中山(ばんばなかやま)地区。国道を横道に逸れ、緑が生い茂る坂道を下り、海岸線に突き当たると、まるで異国の小さな港町のように海を見下ろす丘に家々が点々と並ぶ。蒼々とした海、心地よい潮風、車もほとんど通らない静かなこの地区に、今春イタリアンが楽しめる「カフェかなっぺ」がオープンした。被災した土地に海外製のトレーラーハウス。海からの風が吹き抜け、穏やかな大平洋がどこまでも広がる。静寂に包まれた景色は、まるでプライベートビーチのようだ。横浜在住でレストランを経営していた経験を持つ妻の嘉苗さんと、地元水産会社に勤務していた夫の馨さんを繋いだのは、あの震災だった。震災直後、いてもたってもいられずボランティアに向かった福島。混乱の中、通りかかった自衛隊に護衛されるように辿り着いたこの町で二人は出会う。馬場中山地区は被災後、津波による瓦礫で全ての道が寸断。彼女は避難所で食事作りの手伝いをすることになる。それが二人の出会いの始まりだった。そして1年半後、手造りの結婚式は町で話題になった。 「カフェかなっぺ」には沢山の人々が集まる。仮設暮らしの息抜きとして利用する人々、ボランティアに訪れた人、海外から訪れる人、店裏にテントを張りボランティア活動に向かう人々の姿もある。そしていつもそこには沢山の笑顔がある。夫の馨さんは震災直後から立ち上げたサイトで毎日情報を発信し続ける。町の中心部でない限り、まだまだ復興は遠い。様々な人々がここを訪れ、この場所を拠点にし、この町と関わっていくきっかけにして欲しい。それが二人の願いだ。いつかこの町を訪れる時、この静寂に包まれた美しい景色を眺め、彼らと語らい、奮闘する町の人々の暮らしを感じて欲しいと思う。  






①海の見えるカフェ『カフェかなっぺ』を経営する千葉馨さん(右)と嘉苗さん(左)。
②トレーラーハウスとは思えない内観。まるでプライベートビーチのように大平洋を独り占めできる。BGMはなく心地よい潮風と自然の音を楽しむ。
③イタリアンシェフの香苗さんが厨房を担当。カウンター越しにいつも笑顔で会話する姿が印象的。
④南三陸季節の食材を使用したパスタが絶品。写真はウニのクリームパスタ。
⑤「本日のスムージー」は新鮮フルーツの香りと爽やかな味わい。

「カフェかなっぺ」
馬場中山カオル商店HP
http://www.chibakaoru.jp/