text&photo by kyosuke yamauchi(Minamisanriku)
 




「現代版百姓」自らをそう語るのは埼玉県から南三陸町に移住した二十代の若者だ。震災直後に東京の広告制作会社に入社。「食」の分野に精通する仕事の中、編集兼ライターとして働いていた。くしくも世の中は「復興支援」の真っ只中。食に関する広告も東北特集で溢れていた。様々な媒体による東北特集。農家や漁師、一次産業の取材のため、ライターとして何度も東北を訪れた。週末を使いボランティアにも参加した。だがやがて世の中にある変化が現れる。それは復興支援という言葉の薄れだった。PRしてもすぐに売れ行きが下がっていく。広告の仕事はその場だけの手助けなのかもしれない。もっと自分にやれることがあるのではないか。祖母は農家で祖父が元漁師。幼い頃からその姿を見てきた彼の中で何かが変わり始める。もっと一次産業と関わろう。生産者に寄り添う仕事をしよう。決意した彼は3年間勤めた広告会社を退職、支援団体を通じ被災地での活動を始める。首都圏と生産者を繋ぐツアーのボランティアコーディネイト、映像の編集、ライター業。そして一年が過ぎた頃、南三陸町で菊の栽培を営む一人の社長と出会う。「好きな事を続けながら、農業をやらないか」。社長は彼にそう言ってくれた。そして彼は農家でありライターであり、映像編集者となった。それが彼の言う「現代版百姓」である。百姓を愛しながら、スキルを活かし地域と関わり共に進んでいく決意。南三陸の人達には正直さがある。自分らしく生きている。本当に楽しい。だから依頼があれば漁師のPR広告をデザインし、動画も制作する。グラフィックソフトでチラシ制作も手がける。すべては一次産業のため。地域の人たちのため。そして喜びを共有するため。東北での仕事を探していた頃、感じた事があった。若者の働き方、その選択肢の少なさがハードルだった。ならば自分がその成功者になればいい。得意な事を互いに補い強く関わり生きていく道。100人いれば100通りの生き方がある。必要としてくれる人がいれば応える理由がある。そしてそこには生きる喜びがある。  






①南三陸で菊の栽培を行う株式会社小野花匠園で働く、浅野拓也さん(27)。
②ハウスの前には海の近くとは思えないほど豊かな田園風景が広がる。海と山が共存する地形、これが南三陸の特徴だ。
③一年を通して栽培される色とりどりの菊は圧巻。
④栽培した菊は花束に加工しスーパーやコンビニなどで販売している。
⑤浅野さんが手がける生産者のPR広告のラフ。グラフィックソフトを使い企画から制作まで自ら手がける。

株式会社小野花匠園
www.onokashouen.com